V 実践例1

1 小中教員研究授業参観

小中学校の要請訪問等に合わせて、小中相互の授業参観を行った。授業参観を行うにあたり、三校の校長が話し合いをもち基本的な方針を定め、具体的な日取りは教務主任が調整を行った。今年度は、授業参観のみの参加で、授業研究会への参加は行わなかった。

(1)小中教員研究授業参観実践までの流れ
@ 日程
・ 関係校の校長の話し合い     6月
・ 教務主任による日程調整     7月
・ 要請訪問等による授業参観    7月〜1月
A 授業参観の手順
・ 年間の要請訪問等の日程を各学校に通知する。
・ 授業参観1週間前までに細かい日程等の連絡通知を出す。
・ 授業参観前日までに参加者の報告をする。
・ 指導案は当日または前日までに参加者へ届ける。
・ 授業参観をし、参観レポートを提出する。

(2)小中教員研究授業参観を通しての教職員の感想

@ 小中学校における指導方法の違いに等について
 
<中学校教諭が小学校を参観して>

・ 1年生でも、表現すること、きちんと聴き合うことができていた。表現する前に十分思考する場をとり、内容を豊かにしていた。
・ 2年生で、「○○さんの意見と違うのですが……」「○○さんにつけたします。」といった発言が多くあった。他の人の意見をよく聞き、自分の考 えをしっかりもって、伝えたいことを表現していた。
・ 子どもたちの意見が活発に出たことは素晴らしい。中学生になるとなぜ意見が出なくなるのか反省しなくてはならない。
・ 児童が言葉を大切にし、コミュニケーション能力を高めるためには、教師のコミュニケーション能力や児童の話を真剣に聴き、受容するあたたかな姿勢が大切であることを感じた。

・ 5年生の社会の授業では、ちらしという身近なものをヒントに工業製品の種類や数の多さ、生活との関わりなど、多くの考えを自由に引き出すことができている。中学校では、「結論ありき」の授業ばかりのようなので、新鮮さを感じた。
・ 6年生の討論の授業では、話し合いの手順の提示、各グループの意見をまとめたワークシートの活用など、話し合いがスムースに進むよう工夫されていた。発表原稿がしっかりしており、自分の意見、質問として発表したり答えたりしていた。

<小学校教諭が中学校を参観して>
・ 数学のTTによる授業は、きめ細かく生徒を見取り、指導できていた。T2は、T1を補助し、個別指導に重点をおいていることがよく分かった。T1,T2の信頼関係が見てとれた。
・ 「等式の性質」を理解させるための手作りの天秤は、インパクトがあり、心に残るものだった。
・ 道徳の授業であったが、VTRや地域の方のインタビューなど、視聴覚教材を豊富に使用していて、生徒の興味・関心を集めていた。
・ 運動量が多く、1時間の中で生徒が自分のすることがよく分かっていて、無駄なく動いていた。教師の指示が少なくても素早く行動できていて、さすが中学生と感じた。
・ 自分たちでできることは自分たちでさせ、説明を入れるところはしっかり入れる。グループ編成を少人数にして運動量を確保しつつ、生徒一人一人に思考させる時間を設けている等々、小学校でも生かせるヒントをたくさん見ることができた。
・ 音楽のように技能が伴う教科は、できる、できないがはっきり分かりやすいので、生徒の好き嫌いが分かれるところだと思うが、生徒の親しんでいる曲やヒット曲を教材にすることも、意欲的に音楽に関われるきっかけになると思った。
・ 理科の授業において、実験結果から結論を出すときに資料を活用しているところが参考になった。これから小学校においてもテキストを読み解く力が必要になると思う。小学校でも少しずつ取り入れていきたい。
・ コミュニケーション能力を重視して「生徒の語らい」に重きをおいた授業であった。発表の仕方もしっかりしていた。
・ 生徒の反応をつぶやきやメモから的確にとらえ、挙手していない生徒にも発言の機会を与え、授業を構成していた点が参考になった。生徒間の考えの対立などを教師がうまくつないでいたが、生徒どうしの意見の交換があってもよいではないかと思った。

・ 中学校における小グループでの話し合い活動は、自己の考えを相手に分かるように伝えたり、相手の考えを理解しようとして聞いたりすることができ、コミュニケーション能力の育成に有効であると感じた。

A 小中学校の指導内容の関連性・系統性について 

<中学校教諭が小学校を参観して>

・ 「育てたい表現力と手立て」が学年の発達段階に応じて作成されている。これを中学校まで延ばし、小中9年間を通したものが作成できると素晴らしい。
・ 6年生の討論の授業は、他教科の学習や総合ともリンクできるような学習題材であり、子どもたちの目線で討論できる内容であった。小学校でトレーニングされている気付きの力、考える力、発表する力をさらに生かしていきたい。

<小学校教諭が中学校を参観して>
・ 中学校の国語の教材は、小学校の実態からも、とても難しい内容であると感じた。ある程度、長い文章も読みこなすことができるように、小学校のうちから長編などにも挑戦させて、読書が好きな子を育てることが大切だと感じた。
・ 数学の授業を見て、答えを導き出させるだけでなく、そこに生まれる思考の流れを子どもたち同士で伝え合う場面を設定しなくてはと反省した。数式を言語化(その反対も)するトレーニングも取り入れたい。
・ 小学校においては、「運動の楽しさ」や「仲間との協力」が主なねらいだと思うが、中学校では、技能面を中心として運動特性に迫っていることがよく分かった。小学校においては、様々な種別の運動経験をさせることや何事にも最後まで粘り強くがんばれる子を育てていくことが大切ではないかと改めて思った。
・ 教師の指示を待たずに動けるようにトレーニングさせる必要を感じた。長期的な視点に立って、子どもたちの自主性を鍛えていかなければと反省した。
・ 固体、液体、気体というのは、4年生で習うことになっているが、その学びをどこまで子どもたちが生かしているのかという点が気になった。個人差もあると思う。


B その他

<中学校教諭が小学校を参観して>

・ なかなか小学校の授業を見る機会がないので勉強になった。
・ 中学校の現状では、結論ありき、学力(知識)優先で、自由な活動の時間を十分にとってあげていないと感じる。

<小学校教諭が中学校を参観して>
・ 生徒たちが笑顔で生き生きと活動する姿を見て、普段から愛情をもって指導していただいていると感じた。卒業からたった半年程度なのに大きな成長を感じることができた。
・ 小学校では指導しきれなかった部分を補いつつ子どもたちの力を伸ばしてくれていると感じた。
・ 中学校の授業を参観することにより、小学校でもやれることが見えてきたように思う。全職員が交流するのが望ましいと思う。



栃木市教育研究所小中連携部会